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26.臓器移植について
最近、海外での臓器移植が問題になっている。特に腎臓移植が多く、仲介団体を介して移植手術を受けやすいとされる医療後進国で行われることがほとんどだといわれる。ところが、数千万円もの仲介団体に支払ったにも関わらず、騙された同然で得体のしれない医療機関で移植手術を受けて返って体調を悪化させたり場合によっては命を落とす人もいるという。第三国で受けた食手術には医療データーがないことが多いらしく、国内で手術後の体調管理に不備をきたしているという。
国内ではドナーがきわめて少なくて待機に耐えかねてお金のある人は臓器提供されやすい海外へ行くとうことであるが、医療後進国での臓器提供者は生活のために自らの臓器を売るという臓器売買行為が蔓延しており、臓器の質や管理に問題が多いことが指摘されている。そのことが、世界中で問題にされており、解決のための見当が進められているという。
私自身は脳死による臓器移植には基本的には反対である。自分の健康保険証には臓器提供の意思なしとしている。生体肝や生体腎移植に関しては限定的にケースバイケースで考えざるを得ないと思っている。この移植は家族間で行われることが多いようだが、家族愛を盾にとって提供者を決め手はならないと考える。平野啓一郎の「或る男」に生体肝移植を巡るくだりがある。
ある老舗温泉旅館の社長である父親が肝臓を病んで生体肝移植しかないことを告げられ、家族で最適合者となった次男が提供予定者となった。長男は酒浸りのためもあって不適格となった。しかし次男は父親と折り合いがよくない。稼業の温泉旅館は父親が頼りにしている長男が継ぐことになっているが次男はその長男とは犬猿の仲。両親や長男が提供承諾するよう押し迫るなか、次男が提供後の身体的リスクの可能性もあって提供者としての承諾に迷っているあいだに父親は無念を抱いて死んでいった。次男は居場所のない家を離れて闇取引による戸籍交換で他人になりすまして生活している。
このような内容なのだが、考えさせられた。また、私が10年ほど前に務めていた横浜の治療院で同僚だったあるドライバーが家族の生体肝移植で最適合者となった自分のことで悩んでいたことを覚えている。自分はやはり提供しなければならないのか、手術に伴うリスクをどう受け止めるべきか、ということであった。その人はまもなくして退職した。提供者として手術を受けたのであろうか。美談では片づけられない人の葛藤が生まれることもあるのを知っている。
臓器移植は人間の体を多数の部品による構造物とする考え方がベースにあるように思われる。不良の部品を新しい部品に取り替えて修理するようなものといえる。しかし、人間は、いや生物はと言ったほうがよいかもしれないが、自分にとって異質なものを除外しようとする働き作用はがある。免疫反応である。このおかげで細菌やウィルス・カビなどに感染しないよう身を守ってくれている。この免疫作用によって他人の臓器が自分の体に結合されたりすると細菌などと同様に異質なものとして攻撃して除外しようとする。いわゆる拒絶反応である。臓器移植ではこ拒絶絶反応をを抑えるために強い免疫抑制剤を投与される。
公益社団法人日本臓器移植ネットワークによると、臓器移植の生存率は以下の通りだという。
臓器移植後の生存率(5年)
日本の臓器移植の医療技術と移植後のケアは移植の多い国と比べても、非常に高い水準にあります。
移植後5年で移植者が生存している割合(生存率)は、心臓、膵臓、腎臓で90%を超え、肝臓80%、肺、小腸は70%を超えます。
また、国立循環器病研究センターによれば「心臓移植後の10年生存率は、国際心肺移植学会の統計ではおよそ50~60%程度ですが、我が国においては施行数こそ少ないものの90%弱と良好です。」という。
手術成功によって病院から解放されて学校生活や勤務などの社会生活を日常的に営むことのできている例を聞くと‘よかったね’という思いは禁じ得ない。ただし、毎日の免疫抑制剤の服用とそれによる感染症へのリスク回避のための留意など細かいケアは欠かせないという。
次に日本移植学会による移植手術件数や生存率に関する記述を掲載する。
2022臓器移植ファクトブック
心臓移植後の累積生存率
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国内で2022年8月31日までに心臓移植を受けた675人(全年齢)の生存率は5年93. 3%、10年88.6%、15年79.6%です。時期などの違いはありますが、日本の心臓移植後の生存率は国際レジストリと比較しても大変良好と言えます。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
日本における肝移植数
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2021年12月末までに行われた成人・小児を合わせた肝移植総数は10,839例であり、初回移植10,469例、再移植349例、再々移植20例、再々々移植1例でした。再肝移植は脳死移植で118例、生体移植で252例です。ドナー別では、死体移植718例(脳死移植715例、心停止移植3例)、生体移植が10,121例であり、年間400例程度の肝移植が日本で行われています。
尚、肝移植、腎移植においては、2021年に20歳未満のドナーからの臓器提供では20歳未満のレシピエントが優先されるようになりました。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
日本における肝移植後の患者生存率 生体肝移植 vs. 脳死肝移植
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2021年12月末の集計では、国内で死体肝移植を受けた718名(内、脳死肝移植715例)の方々の累積生存率は1年89%、3年86%、5年83%、10年76%、20年58%です。
一方、生体肝移植後10,121例の累積生存率は、1年86%、3年82%、5年79%、10年74%、20年65%です。脳死移植と生体移植の差はありません(2021年12月末集計)。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
脳死肝移植における年齢別の患者生存率 小児 vs. 成人
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脳死肝移植における小児と成人の肝移植成績の比較では、小児の累積生存率は、1年89%、3年88%、5年86%、10年86%であるのに対し、成人の累積生存率は、1年89%、3年86%、5年82%、10年74%であり、小児と成人の差はありません(2021年12月末集計)。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
生体肝移植における年齢別の患者生存率 小児 vs. 成人
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生体肝移植における小児と成人の肝移植成績の比較で、小児の累積生存率は、1年91%、3年89%、5年88%、10年86%であるのに対し、成人の累積生存率は、1年83%、3年78%、5年74%、10年68%であり、小児肝移植の成績が有意に良好です(2021年12月末集計)。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
生体肝移植におけるABO血液型適合度別の患者生存率
血液型一致 vs. 適合 vs. 不適合
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2016年にリツキシマブが保険適応となり、血液型不適合生体部分肝移植は通常診療の範疇となりました。3歳未満では血液型が一致している場合と全く同じです。年齢が大きくなるにつれて特別な拒絶反応がおきるので免疫抑制療法を工夫して行います。
成人ではかつて生存率は20%でしたが、特に2004年半ばより、リツキシマブが臨床使用され始めて以降は、血液型適合と遜色ないほどに改善しています。
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日本における腎移植数・透析患者数の推移
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2021年の腎移植数は1,773例で、前年より62例増加しています。1989年より4~5年間減少傾向にあった総移植患者数は次第に増加傾向にあり、2006年には年間1,000例を超え、2019年に初めて2,000例を超えました。2021年末の透析患者数は349,700人で年々増加していますが、献腎移植登録者数は2021年末で13,738人とほぼ横ばいの状況が続いています。
尚、肝移植、腎移植においては、2021年に20歳未満のドナーからの臓器提供では20歳未満のレシピエントが優先されるようになりました。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
腎移植レシピエントの年齢(2021年症例)
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腎移植レシピエントの平均年齢は、生体腎が49.2±14.8歳、献腎が51.0±15.6歳で、献腎が生体腎のレシピエント年齢を上回りました。これまでも献腎レシピエントが生体腎レシピエントに比較して高齢な傾向がありましたが、近年はほぼ同年齢となりました。生体腎移植と献腎移植をあわせると40歳代と50歳代が多くを占め、それぞれ382例、448例と約47%を占めています。10歳未満への腎移植数は生体腎移植が20例、献腎移植は5例で、合計では25例(1.4%)と非常に少ないのが現状です。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
世界の透析患者数 上位5カ国(人口100万人あたり:2020年)
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人口100万人あたりの透析患者数を国別に比較すると、日本は2番目に多いという結果になっています。
UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成
世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本(人口100万人あたり:2020年)
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日本における人口100万人あたりの腎移植件数は世界と比較しても非常に少ないという結果になっています。
UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成
世界の年間移植件数 上位5カ国と、韓国、日本
献腎移植、生体腎移植の割合(2020年)
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日本は他の国と比べると、腎移植件数に占める献腎移植の割合が非常に低くなっています。
UNITED STATES RENAL DATA SYSTEM 2022 ANNUAL DATA REPORT より作成
年代別患者生存率(生体腎・献腎)
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生体腎移植、献腎移植のいずれにおいても、生存率・生着率は年代とともに改善しており、特に2001年以降は良好な成績でした。生存率に関しては、生体腎では1983~2000年で1年生存率97.1%、5年生存率が93.6%でしたが、2010~2020年では 99.2%、96.7%に上昇しています。
献腎においても同様に1983~2000年の92.6%、 86.0%から2010~2020年では97.8%、92.8%と上昇がみられています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
年代別生着率(生体腎・献腎)
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生体腎移植、献腎移植のいずれにおいても、生存率・生着率は年代とともに改善しており、特に2001年以降は良好な成績でした。生着率についてはさらに伸び幅が大きく、生体腎では1983~2000年で1年生着率93.0%、5年生着率が81.9%でしたが、2010~2020年では98.7%、93.1%に上昇しており、献腎では1983~2000年の81.6%、64.8%から2010~2020年では95.9%、87.9%へと著明に上昇していました。
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腎移植レシピエントの死亡原因
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移植時期別に全レシピエント(生体腎+献腎)の死因を調査した結果、心疾患、感染症、脳血管障害、悪性新生物(がん)が上位を占めており、2001~2009年においては心疾患が、2010~2020年においては悪性新生物が死亡原因の1位となっています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
レシピエントの移植腎廃絶原因
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移植時期別に全レシピエント(生体腎+献腎)の腎廃絶に関する追跡調査の結果、いずれの時期でも慢性拒絶反応による移植腎廃絶が最多でしたが、その割合は1983~2000年で61.1%、2001~2009年で31.8%、2010~2020年24.3%で、新しい時期は観察期間が短いため低くなっています。
急性拒絶反応による廃絶に関しては、いずれの時期でも少なく、免疫抑制薬の発達と急性拒絶反応に対する治療法が確立しているためと判断されます。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
生体腎移植ドナーの予後(死亡率)
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2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査では、ドナー腎採取術後、3ヵ月時点において3名、1年で14名、2年で7名、3年で6名、4年で14名、5年で8名、6年で10名、7年で9名、8年で10名、9年で6名の死亡例が報告されています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
生体腎移植ドナーの合併症(尿蛋白)
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2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査の結果、ドナーの術後の合併症については、尿タンパク(+)以上の症例が移植後3ヵ月で107名(0.9%)、1年の時点で109例(1.1%)に認められています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
生体腎移植ドナーの合併症(高血圧)
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2009年から2020年までに施行された生体腎移植17,720例の生体腎ドナーの調査の結果、ドナーの術後の合併症については、高血圧ありの症例が術後3ヵ月で1,554例、1年で1,413例、2年で1,045例、3年で928例報告されています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
日本における膵移植症例数の推移
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1997年10月「臓器の移植に関する法律」の施行後、2000年4月に第1例の膵腎同時移植が行われてから、2021年12月末日までに461例の脳死下での膵移植(うち391例の膵腎同時移植、51例の腎移植後膵移植および19例の膵単独移植)と3例の心停止後での膵腎同時移植が行われています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
膵移植レシピエントの性別と年齢
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膵移植レシピエントの性別は女性278例、男性183例で、女性が60%を占めました。
年齢は30歳代が115例、40歳代208例と、レシピエントの70%は30~40歳代となります。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
膵腎同時移植レシピエントの透析歴
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膵腎同時移植患者の透析歴は平均7年で、ここ数年で大きな変化は見られません。腎臓単独の移植の平均待機期間の14年9カ月に比べると約半分になっています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
膵移植後の患者生存率と移植膵生着率
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移植した患者の1年、3年、5年、10年生存率はそれぞれ、95.8%、94.5%、 92.5%、86.1%です。
移植された膵臓の1年、3年、5年、10年生着率はそれぞれ86.1%、80.9%、 77.0%、69.2%です。
一方、膵腎同時移植で移植した腎臓391例の1年、3年、5年、10年生着率はそれぞれ93.2%、92.0%、89.2%、81.2%です。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
日本における肺移植症例数の推移
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生体肺移植の国内での実施件数は、2021年12月末時点で、合計270件です。施設別生体肺移植実施件数の累計は、京都大学113件、岡山大学94件、東京大学21件、東北大学15件、大阪大学11件、福岡大学6件、長崎大学5件、獨協医科大学3件、千葉大学2件、藤田医科大学0件です。脳死・生体肺移植全例を合計しますと、2021年12月までにわが国では928件の肺移植を行ったことになります。なお、これに加えて3例の心肺同時移植が実施されています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
肺移植待機患者数の推移
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移植を受けた方、亡くなった方を除いて毎年12月末時点で肺移植を待機されている方の数は図のように推移しており、2021年12月末では待機数は心肺同時移植の4人を含めて477人となっています。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
肺移植後生存率
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2021年12月末時点でのわが国の成績は、脳死肺移植では5年生存率73.7%、10年生存率61.4%、生体肺移植では5年生存率73.8%、10年生存率62.5%と成績に違いはありません。欧米での肺移植の成績を中心とする国際心・肺移植学会の2021年の報告で公表されている成人肺移植の5年生存率は、1996~2001年の肺移植では65.4%、2002~2007年の肺移植では69.8%、2008~2013年の肺移植では70.6%です。また、心肺同時移植の3例は2020年12月末時点で生存中です。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
日本における小腸移植実施件数
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2021年12月末までの小腸移植は33名に対して37例の移植が実施されました。ドナー別では脳死小腸移植が24例、生体小腸移植が13例でした。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
小腸移植レシピエントの年齢分布
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レシピエント33名の性別は男性が22名、女性が11名でした。症例数に対する年齢分布を示します。本邦での小腸移植症例は小児期の疾患に基づくものが多いのですが、19歳以上の成人症例が4割を占めます。これは依然として小児のドナーが極めて少ないことから、成人期まで待機した患者のみ移植を受けることができるのが原因と考えます。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
小腸移植の移植成績
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2021年12月までの患者生存率を示します。患者の1年生存率は91%、5年生存率は73%、10年生存率は59%となっており、他の臓器移植に比べて遜色ない程度になっています。しかしながら、グラフト生着率は1年生着率、5年生着率、10年生着率がそれぞれ 86%、64%、47%と短期成績は向上したものの、長期成績はまだ十分とは言えません。
日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック
海外に比べて臓器移植は少ないとはいえ、データをみて私の思っていた以上に臓器移植が行われていることを知って、以前に比べてけっこうポピュラーになっているのだなと認識した次第である。肝・腎移植ではほとんどが生体移植であるとしめしている。生存率が一番高いのが心臓移植であり、10年生存率が9割近くあり15年生存率は8割だという。1999年に臓器移植法が制定されてから脳死でのドナーからの提供が認められたことが大きいようである。
私は移植でしか助かる見込みのない人が移植によって人生を得たことは喜ばしく思う。しかしながら、提供するドナーの立場から考えるならば、まだ心臓が動いていて呼吸もしている段階での脳死判定による死亡宣告とそれによる臓器摘出にはなにか釈然としないものを感じる。それでも、脳も心臓もも死んで呼吸も止まった完全死の段階での臓器はかなり質が落ちるらしく、そのために脳死段階での臓器摘出を合法化する必要性が長らく叫ばれ、それが1999年の法律となったという経緯がある。完全死以前を死亡とすることには前もっての本人や家族の承諾が当然必要である。日本移植ネットワークによれば、ドナーの残された家族のなかには本人がいなくなったことへの悲嘆にくれている人もいれば、移植された人に元本人の臓器をみて元気に働いていることにドナーとなった本人の元ある。気な姿を想像して安堵したりすることがあるという。Aという人間が消滅させられてBという人が生き返る。健康体で新鮮なぴちぴちした肉体を脳死イコール死とみなされて水揚げされて元気な臓器を摘み取られるというありさまは私には抵抗感を感じてしまう。近年盛んになっているiPS細胞によって自分の臓器を作り出すことができれば問題はかなり解決すると思われる。なにより自分由来であるから拒絶反応も起こらず、免疫抑制剤を使う必要もないから感染リスクをあまり恐れることなく普通人とほとんど同様の日常生活ができることは確実であろう。現在、心筋や神経・血管・腸管・皮膚・網膜が再生されているという。ただしクーロン人間となった自分と瓜二つの人からの移植にはまた深刻な倫理上の問題が生じるが。‘部品’に留めておくことが必要であろう。
生体間移植は基本的に生命のやりとりをすることはないが、脳死臓器移植には生命のやりとりが生じる。しかも脳死直前まで健康体だったことが質の高い臓器の前提となっている。不健康な質の悪い臓器は不適格である。水揚げされたばかりの新鮮でぴちぴちした魚を食べるととても旨い。それと同じ道理である。生命のやりとりには提供する側、提供される側双方に心理的倫理的重荷が生じやすいことを医師・患者・ドナーも含めてすべての人が肝に命じる必要があるだろう。移植された人は自分のものではない他人の臓器に対して生きている限り感謝の念を持ち続けなければならないだろう。でなければ、奪われた命のドナーやドナーの残された家族から報復の刃が襲い掛かるかもしれない。機械の部品交換とは訳が違うのである。私は、生命のやりとりを伴わない臓器移植を願うものである。
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