/
47.‘正しい’とは?
これは正しい、とかそれは間違っている、とか、相変わらず安易に黒白をつけたがる風潮のようである。
4月冒頭(24年)、静岡県の川勝知事が突如6月辞職表明した(のちの9日に議会に辞職願いが提出されて4月末日失職、翌月26日知事選が決定)。新入職員への訓示にあった職業差別と受け取られかねない発現に責任を取ってとか、リニア新幹線開業延期決定を踏まえての節目を見てとか、やかましい追及に耐えかねてとか、高齢のせいかもとか、いろいろ言われている。本人はリニア延期決定を節目としている。私にとってはその理由はどうでもよい。問題は、リニア開業延期についてのいろいろな意見だ。
リニア賛成派は川勝知事にとにかく悪口を言い、リニア反対派は知事はリニアの問題をあぶりだしたと評価している。立場によって見方がこんなに違うものかと思った次第である。
リニアはほとんどがトンネルのモグラ路線のようである。平地の東京や名古屋も大深度のトンネルと聞く。東京・名古屋間を直線距離でということで、南アルプスの急峻な山々の土手っ腹をぶち抜いていくらしい。それによる大量の残土、生態環境や地下水・河川への水脈の変化などの問題が指摘されている。
リニア新幹線は、1969年の東海道新幹線・名神高速道路開通や東京オリンピック開催と同様に‘バラ色の夢’シンボルとして期待されているようだ。私も当初はそうだった。テレビも新聞もほとんどがリニアよいしょだったこともある。そのリニアに公然として噛みつき、多くの人々に問題提起したのが川勝知事だった。彼の本心はどうであれ、リニア推進一色の世論に風穴を開けたことは確かといえるだろう。
どのマスメディアも‘川勝知事悪者’を展開し、リニア新幹線早期開業を願うJR東海への擁護者となっているようだ。与野党問わず、沿線予定自治体はリニア待望論で充満しているようである。私も当初、最高時速500キロ・品川ー大阪1時間のリニア新幹線という謳い文句に心踊った。しかし、何人かの識者はリニアは重大な問題だらけで、世紀の失敗といわれる超音速ジェット機・コンコルドの二の舞を警告している。
JR東海という一民間企業にしては10兆円を超えるとされる膨大な建設費、新幹線の4倍から5倍以上といわれる電力消費、生体への強力な電磁波の影響、トンネル工事による残土処理・地下水などの問題、中央構造線という大きな活断層を貫くことによる地震へのはっきりしない対策、停電・崩落・火災・テロなどへの具体性に乏しい対策、ほとんどが大深度のトンネルからの避難に対する問題、不便な中間駅と大阪までの延伸がかなり遅くなることへのリニアの存在意義への疑問など枚挙にきりがない。そしてまた、静岡工区のみならず、神奈川・山梨・長野・岐阜・愛知つべてにおいて工事がほとんど進んでいないことが最近明らかになっている。
なにが正しいのか、なにが正しくないのか、私たちは世間の風潮やテレビ・新聞・SNSなどの情報環境に惑わされることなく、自分から進んで事を明らかにする姿勢が必要だということだろう。
古代日本史では、大化の改新(645年)で蘇我入鹿という悪の権現を政治の見方・中大兄皇子と中臣鎌足が斬り殺したとなっている。もし、その入鹿が実は聖徳太子だったのだとすれば・・・。歴史家も教科書も鎌足の子である藤原不比等による日本書紀を無批判に信じて歴史認識していることをほとんどの日本人はしらないようである。正しいとはなにか、を判断する前に、事実はどうだったのか、、それを知ることが第一ではないだろうか。
結果がこうなった原因はなにか、その原因にどんな諸条件が加わってこのような結果になったのか、を仏教ではやかましくいう。これは、現代科学の基本的スタンスでもある。現場はいったいどうなっているのか、常に曇りない目が問われ続けられている。
コメント