/ 27.般若心経 改訳
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真実者の智慧の核心を要略して説く
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自在なるありようを自身に実現しようとして励んでいる求道者が自在なる智慧の修行を深めていくなかで、一切と自分が一枚に融け合って、一切のものや心がこれとして凝り固まったものはなく、融通無碍の自在なるありようだということがはっきりと知らされた。そのとき、こだわりから生じていた一切の苦しみから解放された。
シャーリプトラよ、存在はこれという凝り固まったものはないに他ならず、かと言って、凝り固まったものはないといえども存在は存在としてある。存在は同時に凝り固まってあるにあらず、また、凝り固まってあるものはないと同時に存在は存在として確固としてある。心のいろいろな作用も然りである。
シャーリプトラよ、この世界のもろもろのありようは凝り固まったものはないという相から見れば、凝り固まったものがあるならば存在するところの生じるということや滅してなくなるということ、きたないとかきれいとかいうこと、増えたり減ったりするということはないのだ。凝り固まったものはないと同時にあることはあるのだというそういうダイナミックな自在の働きの中にあるがゆえに、無限の存在があり、無限の心の働きがあり、無限の感覚や意識の働きがあり、無限の感覚世界と意識世界があり、無限の人生模様があり、無限の悟りと無限の智慧、無限の得るものがあり、無限の所得があるがゆえに求道者は真実者の智慧によるがゆえに心に障りなく、障りないがゆえに恐れることなく、間違った一切のさかさまの夢相から離れて真実の世界に到達する。過去現在未来の一切の真実者はこの真実者の智慧によるがゆえにこの上ない無上の悟りを得るのだ。
ゆえに自在者の智慧の働きを知るべきである。これは、大いなる神ともいえる大宇宙の力であり、大いなる光の力であり、この上ない力であり、並び立つものがないほどの宇宙いっぱいの力である。そして、この智慧の働きは一切の苦悩をよく取り除くことができるのだ。このことは真実であり嘘でもまやかしでもない。
この智慧の力を説くがゆえにすなわち、短い詩にして言おう。
行こう 行こう、悟りの世界に行こう、完全なる悟りに到達しよう。悟りよ、幸いあれ。ここに、真実者の智慧の核心を説き終わる。
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