/ 77.‘日本人ファースト’に思う
今月20日に投開票の参院選で、‘日本人ファースト’とかそれに類する論調が流行っている。
「経済侵略で都心住めず」 「行き過ぎた外国人受け入れ反対」・・・。
外国人流入のために、治安悪化・健康保険や生活保護の悪用・外国人による土地や建物などの日本資産買い占め・日本人の生活破壊などが進んでいるとの主張が耳によく入る。これらの意見をみて思うのは、外国人排斥論の匂いが強く感じられることだ。
少子高齢化による働き手不足と円安の進行によって外国人が日本にたくさん来るようになったのだと多くの識者が言う。繁華街や行楽地ではいろんな国の人の姿が目に入る。労働現場でも然りである。私の自宅の一軒となりの家の解体工事にはインド人かバングラディシュ人のような浅黒い肌のアジア系の人が何人か働いていた。
本来なら、日本にお金を落としてもらって日本により親しみを持ってもらい、介護や建設現場、飲食業などの大変な職場をも支えてくれている。それにも関わらず外国人に対する悪感情が増しているようだ。
私は、外国人に責任をなすりすける論調には強い反発を覚える。外国人による犯罪は年々減少しており、犯罪比率は日本人と同じだとの指摘がある。外国人による生活保護受給率も全体のわずか2.9%に過ぎない。健康保険も、むしろ、若い世代が多くて医者にあまりかからない外国人の方が制度を支えている実体がある。外国人の自動車免許取得の問題については、警察庁は今年10月から住民票の写しを求め、問題を5倍の50問に増やして9割以上の正解でもって合格とするとしている。短期ビザによる観光客には不適用となるということだ。ジュネーブ条約による国際免許を持っている場合は可能だ。ところで中国やベトナムのようなジュネーブ条約未加盟国には国際免許が取れない。要は、観光客のような短期ビザに対して緩すぎる外免制度が問題であって、外国人に問題があったわけではない。
他にも、外国人留学生に対する優遇を問題にしている主張があるが、優秀な外国人留学生や研究者を日本に呼ぶことこそが国力強化にもつながるはずである。アメリカの学術レベルが高いのは優秀な外国人留学生や研究者の積極的な受け入れがあることはよくいわれていることだ。
‘日本人ファースト’を叫ぶなら、なぜ対米従属政策や日米地位協定の不当な差別を糾弾して見直しを訴えないのだろうか。‘日本人ファースト’には、欧米に対してはあまり問題にせずに、中国やベトナム・ミャンマー・バングラディシュ・インドなどのアジアの人々に向けられているように思う。今まで日本より低いレベルとみなしていた国々の人たちが台頭して日本のあちこちに目につくようになったせいではないだろうか。欧米人に対するコンプレックスは是認して、それ以外のアジアなどの人たちに対する劣等感は受け入れがたいということではないだろうか。
日本は古くから移民がやってきた歴史がある。まず、縄文人と呼ばれる原日本人(アイヌもその一つだと今では証明されている)が大陸からやってきた。それから弥生人といわれる人たちが朝鮮半島からやってきて西日本を中心に住みついた。その過程で対立することなく縄文人と弥生人は融合して今の日本人の基礎となった。飛鳥・奈良時代には多くの帰化人がやってきて政治や土木・冶金や金属加工などをもたらした。日本のあちこちにある巨大な古墳は彼らの力なくしては造営しえないものだった。
少子高齢化が急速に進む時代にあって、若い外国人の助けがますます必要になることは明らかだろう。資金や優秀な頭脳を積極的に外から呼び込むことも国力強化につながることは歴史が証明している。
外国人たちと融合しながらそのようにして新しい活力ある日本を作っていくのかという発想こそが問われているのではないだろうか。
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