78.核武装論に思う  神谷湛然 記

/  78.核武装論に思う

 先の参院選で躍進した参政党を中心に外国人排除論と共に核武装論が堂々と表立って主張する政治家が目についている。
 ーー周辺に核武装国を抱えている日本は核でもって対抗するしかないーー
 ーー核武装が一番安上がりで効果的ーー
 まるで北朝鮮の主張のようだ。
 日本は核不拡散条約に加盟しているが、核武装するためにはこの核不拡散条約から脱退する必要がある。しかも世界唯一の被爆国である日本が核武装すれば、世界中が核兵器を通常兵器と同じような感覚で武装して当然だとなるだろう。それらの国々のなかで、アジアやアフリカ、南米の政情不安の絶えないところが多く見受けられる。為政者の暴走によって核兵器が暴発しやすくなることは目に見えている。戦争というものは一度始まったらなかなか終わらすことが難しいのは、今のウクライナ戦争やイスラエルのガザ紛争をみても明らかといえるだろう。‘宇宙船地球号’に乗っている私たちは猛烈な放射能汚染に晒されて生存の危機に陥るかもしれないだろう。
 核武装ないし核共有論を唱える人たちは、中国やロシア・北朝鮮を念頭に日本の核兵器配備の必要を訴えている。だが、世界最大のずば抜けた核保有国であるアメリカを警戒してはいない。まったくアメリカを恐れてはいない。なぜか。アメリカは敵とはみなしていないからに他ならない。このことは別の切り口から見れば、中国やロシア・北朝鮮を敵とみなさないなら核の脅威はないということになるだろう。その実例はすでにある。それは、永世中立国であるスイスとオーストリアの存在である。この2国は通常兵器による武装中立国であり、国民皆兵制を取っている。
 日本は実質的には自衛隊という軍隊を持つ武装国である。そして、日米安保条約によってアメリカと軍事同盟を結んでアメリカの手下となっている。アメリカによって中国やロシア・北朝鮮と必ず敵対するようにさせられている。また、ある人は自由と民主主義を守るために中国やロシアなどの専制国家からの脅威に対抗しなければならないと言う。そうであるならば、なぜ共産党による一党独裁国であるベトナムを敵対視しないのだろうか。そして、アメリカは今や自由と民主主義を尊重する国家と言えるのだろうか。私にはアメリカも中国やロシアと同じ穴のムジナに見えて仕方がない。
 なぜ、危険極まりない核兵器をなくそうという努力をしようとしないだろうか。敵対心を煽って得するのは‘死の商人’だけである。最も強い防衛は、敵を作らないことだと中国の古い兵法は説いている。安保条約を破棄して在日米軍基地を撤退させて文字通りの独立国となってアメリカからのしがらみから解放されるところから日本にとっての本当の平和作りが始まるのではないかと思う。そこから日本は中立国としてスイスのように多くの国際機関や国際問題調停の場として国際平和作りの拠点として機能を果たすことこそが最も安上がりで効果のある‘防衛’ではないかと思うのだ。浮いた軍事の予算を科学技術開発に廻すことで日本に新たなイノベーションを作り出すことができるのではないかと考える。破壊ではなく、作り出すことこそが私たちの進むべき道ではないかと思っている。

1957年奈良県生まれ。1981年3月名古屋大学文学部卒。書店勤務ののち、1988年兵庫県浜坂町久斗山の曹洞宗安泰寺にて得度。視覚に障害を患い1996年から和歌山盲学校と筑波技術短期大学にて5年間、鍼灸マッサージを学ぶ。横浜市の鍼灸治療院、訪問マッサージ専門店勤務を経て、2021年より大阪市在住。
 仏教に限らず、宗教全般・人間存在・社会・文化・政治経済など幅広い分野にわたって配信しようと思っています。
このブログによって読者のみなさまの人生になんらかのお役に立てれば幸いです。
         神谷湛然 合掌。

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