/
44.‘あなたは祖国のために戦いますか’に思う
19日(24年1月)に、ジャーナリストの桜井よし子氏が‘あなたは祖国のために戦いますか’とsnsしてネット上で炎上しているようだ。彼女が懇意にしているある大学の教授が学生たちに国防意識の必要性を講義して学生たちの国防意識がいちじるしく高まったことをツイッターしたものだった。
世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査では、2017年では、日本の‘はい’は13%で世界79か国中、世界最低だったという。ちなみに‘いいえ’は48%で世界6位で、世界1位はマカオの59%だという。
右寄りといわれる人たちには苦々しい結果であろうか。ある識者は、敗戦国であり戦争放棄を掲げた日本国憲法の存在を指摘している。それにもかかわらず、‘いいえ’で日本が世界1位ではなく、‘わからない’が4割近くあったことに、なんらかの複雑な心境を指摘している識者がいる。
私は国防意識以前に、‘祖国’とはいったい何なのか、問題提起してみたいと思う。
もともと‘国’という概念が存在せず、人類はアフリカを出て地球上に拡散していったといわれる。その課程のなかで、ある集団がある場所に定住して共同体を作り、長い年月のなかで特有の血縁・しきたり・ならわし・ことばなどを形成して大きくなっていったのが‘国’だといわれている。日本では、紀元3世紀前後の卑弥呼の時代では百余か国に分かれていたといわれる。時代とともに日本という国のまとまりとなっていくのだが、明治になるまでは沖縄は琉球王国であり、北海道は函館のある渡島半島だけであった。琉球は明治初めに明治政府によって軍事的圧力によって日本に併合され、北海道は明治政府の開拓移民政策によって本土の人たちが住みついて、先住民のアイヌの人たちは住みかを奪われて僻地に追いやられていった。そして、日清戦争で台湾併合し、日露戦争後の朝鮮併合となった。太平洋戦争中ではフィリッピン・インドネシア・インドシナ半島・ミャンマー・シンガポール・マレーシア、さらにグアム・サイパン・ニューギニア・ソロモンやトラックなどの南太平洋の島々までを版図とする‘大東亜共栄圏’を打ち建てた。中国東北は満州国という日本陸軍関東軍の傀儡国であり、中国本土でも南京政府を日本陸軍の傀儡として事実上日本の植民地であった。この広大な‘大日本帝国’が‘祖国’ということだろうか。
ナチス・ヒトラーは‘祖国ドイツ’のためにユダヤ人を大量虐殺した。‘祖国’のために革命をおこしたり戦争反対運動した人がいる。
桜井よし子氏のいう‘祖国’は、時の政府が、自衛にしろ攻撃にしろ戦争を起こした時にその戦場に進んでいくことを意味しているように聞こえる。彼女のいう‘祖国’は時の権力者のことであって、その権力者に刀向かうことは想定していないようにみえる。
守るべき‘祖国’とは何なのか。一人一人が考えるべき課題のように思える。
コメント